パパロア国立公園 張り出し岩の下
3月11日(3日目)パパロア国立公園 Paparoa National Park
Ballroom Overhang
6時45分頃起床。外は相変わらずの雨。ゆっくり休んだ分、朝はいろいろ準備で忙
しい。コーヒーとパン、ブルーベリージャムの朝食を取る。でも、何か部屋の様子が
変?皆の視線が→ある所に向いている。天井から、小さい紐で作ったワッカ(輪)が
ダラリ。「Tammy, I'll kill you ! タミー、あんたを殺してやるから!」ジョアンが、怖い顔
で、にらんできた。状況はこうだ。昨夜、私の「イビキ」で、彼女は全く眠れなかった
らしい。太っている割には神経質な彼女。そう言えば、夜中に「Stop Snoring
! いびき、
うるさーい!」と、叫ぶ声を聞いたような気がする。
目の前に、彼女が作った絞首刑用の縄。数年前 Golden Bay をトレッキングした時、
一緒に泊まったガイドにも、イビキがうるさいと言われたことがある。夜半に逃げられ
たことがある。「イビキのチャンピオン」とも呼ばれた。その時はジョークと受け流した。
しかし今回は明らかに前回とは違う。彼女の顔色を見て、とっさに平謝りする。
「ジョアン、ごめん、ごめん。」でもジョアンの怒りは、なかなか収まらない。
どうにか絞首刑だけは免れたが・・・。(これから先の夜が怖ーい。)
8時30分 ルースの運転でウエスト・ポートへ向けて出発。ここからCape Foulwind
岬
へ立ち寄る。海鳥やオットセイ(fur seales)を見る為だ。foul (汚い臭い)と言う意味
から、コロニーは、鳥の糞だらけの集落だと勝手に解釈。とにかく訪れる所の多い
今回の旅である。
更に南下してCharlston チヤールストンで、食料品を補給する。昔はゴールド・ラッシュ
で沸いた町だとか。ルースの指示で買い物をしながら、時々ジョアンの顔色を盗み見
るが、以前と変わらない様子で、内心ホットする。Toki と彼女はうまが合うみたいだ。
自分の拙い英語では、彼女との溝を埋める手立てもない。「このまま、自分1人だけ、
浮き上がっていってしまうのだろうか・・・?」
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途中で、ランチタイム 炊事も、後片付けも手分けしてやる |
買い込んだ食糧品を、トレーラの収納庫に分別して積み込み、登山口のある
Tiromoana に向けて出発。途中チャールストンの川辺で昼食をとる。キャンプ地
みたいだ。木製のテーブルも備えてある。料理の担当はジョアン。私と Toki は
アシスタント。料理に使う水は川水を汲んでくる。雨水を貯めた大きなタンクもあるが
川水のほうが手っ取り早い。
キャンプ生活では、料理係は重要な任務だ。男性のフレッドは本当によく働く。会計
係も料理係も、実にまめにこなす。慣れているからだろうか。自分がなんか恥ずかし
くなる。英語の出きるToki は完全に皆と打ち解けている。自分もヘコンでばかりいら
れない。そこで日本から携行してきたとっておきのカップメンをサービスすることにした。
ラーメン3個、うどん3個。 ところがうどんに挑戦したジョアン、思わず吐き出す。
どうも外人さん?(自分も外人?)には、うどんの汁は、口に合わないみたいだ。残念。
更にヘコムことになった。
Tiromoana(Ballroom Overhanngの登山口)へ向かう。
このコースはFox River 大峡谷を遡上する。川の両サイドは切り立った崖だ。
相変わらず雨の降り出しそうな空模様。今日のトレッキングは、いきなり川歩きから
始まった。石がゴロゴロ、水は冷たい。ガイドのルースは、早速いろいろ指令を出して
くる。心の準備もまだできていない私達。「こりゃ、えらいことになった、どうしよう?
やめるなら今のうちに言わないと・・・。」Toki も、同じ思いに違いない。でも、ジョアンや
エマが頑張っているのを見ると、「おります。」とは言い出せない。正に後悔先に立たず
Toki と自分以外は、みな経験者だしタフだ。とんでもないサファリ・ツアーに、紛れこんで
しまったことを後悔す。
初めは、川原の石伝いに水を避けて歩いた。そのうち、ついに靴の中まで、ずぶぬれ
になった。そうなるともう恐れるものはない。水の中を大胆にジャブジャブ歩く。子供の
頃に戻ったような気がして楽しい。ところが川の中州あたりまで来ると、水は膝ぐらいの
深さになってきた。思ったより水の流れは速い。外人に比べて、体重の軽い日本人は
浮いて流されそうになる。従って、Toki はフレッドとエマに、自分はルースとジョアンに
両側を支えてもらいながら歩く。男なのに、彼女らに抱きかかえられての渡渉なんて、
くやしいし、情けない! 川水が身を切るように冷たいのと、歩きづらいのとで、息が
切れぎれになる。水が腰近くまできた時、強い流れに何度か足をすくわれかけた。
その上、歩いているうちはいいが、動きを止めると、「サンドフライ」が、わぁーっと群がってくる。
おやつタイムは、川原で立ち食い。絶えず体を左右に振りながら、サンドイッチや、チョコや
干しブドウを口に入れる。ガイドのルースは慣れているから平気だが、
エマ、ジョアンは、もうあちこち刺されている。刺された痕が赤く腫れている。Toki
も
完全防備にかかわらず被害をうけている。因みに、私たちは長ズボンはいていたが、
他の皆さんは短パンである。
日本から持参した痒み炎症止めの軟膏(富山の薬)は好評だった。NZにも虫さされ
の薬は売られているが。値段が張るし持続性にも劣るようだ。塗ればスーッとして痒みがとまる
私の薬。ジョアンが毎回借りにきたので、ついに彼女に1本プレゼントする。
このアドベンチャー・サファリは全長わずか5km位(直線距離にして)。ところが、どうしてどうして。
川を渡り、川岸をよじ登り、小高い丘をやぶこぎし、また川渡り、こっちの岸からあっちの岸へと、
渡渉を繰り返すこと10回位。遂に、進退極まる事態にぶつかる。
昨夜までの雨で、増水した川水が音を立てて流れる危険な箇所に出くわしてしまった
のだ。万事休す。ガイドのルースが、浅瀬を求めて、ルート探しを始めた。川上に行っ
たり、川下に行ったりして、どこか渡れそうな所はないかと、何度も川の中に入って
いった、水深を測るために、胸まで濡らして、たびたび、川の中に入っていった。頑張
る27歳のガイド嬢ルースに、プロ根性を見た思いがした。
私は、だんだん、後ずさりしたくなってきた。「怖いよー!」私の本心は「もはや、これまで。
今晩はここの川原でビバーク」と決め込んでいた。体の小柄な日本人は、この流れには
絶対逆らえない。流されてしまう。唇の色が変わるほど水も冷たいし・・・。
「Toki、タミイちょっと来て!」嫌な予感がする。 ルースがToki に何やら説明を始めた。
フレッドも加わる。ジヨアン、エマも不安そうな面持ちでToki を見ている。私抜きで
しばらく話し合いが続く。「何だ!自分だけは蚊帳の外か・・・。」
Toki が私にルースの話のあらましを告げる。あちこちルートを探してはみたが、川の
増水が予想外だったこと。浅瀬と見える所も渡ってみると意外に流れが急でとても
皆の体力では無理なこと。そこで、提案だが、ちょっと深いけど、対岸に1番近くて、
幅の狭いここを、思い切って渡ってはどうだろうか・・・?と。
背の高いフレッドが水中護衛するという。他のメンバーも全面的に協力するという。
ルース曰く「決断は1番弱い日本人に任せる。決して無理強いしない。皆、あなた方
の決断に従うつもり。但し、ここを渡らないと目的地のBallroom に行くことは出来ない。
ここさえ渡れば、後は大したことは無い。」
日本のシニア2人は決断を迫られた。私の頭の中は、もう真っ白。流されたら、下流の
急流に翻弄されて先ずは助かるまい。でも、Toki は、腹を決めたようだ。
「エーィ!仕方ない、俺も男だ。ここまで来て、ジタバタしても始まらない!渡ることにする。」
ザックの中味を濡らさないよう、恐る恐る川の中に入る。Toki が最初に両脇を支えられて渡り始める。
Toki が背負っているザックの半分位が水に浸かる。こちらに背を向けているので見えないが、
どんな顔をして渡っているのだろうか?この6人のパーテイは、
まさに運命共同体になったのだ!
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両側を支えてもらって、川渡り。 途中急流に足をとられそうになった。 死ぬかと思った。 |
| 1つの川を渡り終えて、一息。 だが、まだまだ先は長ーい! |
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Toki が渡り終えた。次は自分の番だ。ルースとジョアンに支えられて流れに入る。
うわー冷たい。背中に水が走る。もう歯がガチガチ。顔にも水しぶきがあたる。真ん中
の私は、ルースとジョアンのザックのストラップを必死で握り締める。対岸でフレッドが、
待ち受け、私を水の中より引き上げてくれた。ついに渡渉終了!意外にあっけなく終わった。
でも「ヤッター」という気分にはなれない。自分は、皆の足手まといになってばかりいる気がして・・・。
それでも、「Toki、タミイ good job !よくやった!」 と、皆は盛大に褒めてくれた。
ルースによれば、このコースは4回に1回しか、渡渉成功しないそうだ。それだけ雨が
多いということらしい。翌日、帰り道、この近くで1組の男女が中洲でテント泊しているのを見た。
なるほど、2人では、川渡りは無理だったろうな。
Ballroom Overhang に向かう。何もかもグショグショ。ただでさえ重いザックは水を吸って
更に重く感じる。川から離れ、しばらく峡谷沿いに草地を進む。サマータイムのせいかまだ
日は高い。重いザックと足を引きずって、整備されたトラックを無心に進む。突然、前方に
見上げるような断崖。その下に異様に間口の広い大洞窟が姿を現した。
うわーっ、皆、歓声を上げる。名前の通り、岩が大きくせりだした下に出来た洞窟だ。
ダンス・パーテイができる位、充分広い。苦労した甲斐があった。こんなところは滅多
に来られないだろう。
キャンプ・ファイヤーの準備 フレッドが薪を拾い集めてきて、火を付ける。その周りに
濡れた登山靴をぬいて並べる。皆、裸足になる! 濡れた着衣は適当な木の枝に
ロープを張って干した。だが、結局は乾かなかった。
先ずはルースがコーヒーを沸かす。一杯のコーヒーで体が温まり、ようやく皆、生気を
取り戻す。今夜のデイナーは、ルースの作るパスタだ。後は例によって雑食。下界で
は、とても食える代物ではないモノでも、ここでは何でも旨い。
この頃になると、飲料水は全部川の水。絶対に安全だとは言えないが、ペットボトル
の水はとうの昔に、無くなってしまった。仕方がない。カップで川水を何度もすくっては
飲み、すくっては飲みした! 胃腸の弱い自分だが、不思議と腹をこわさなかったの
が有難かった。
「タミイ。川から水を汲んできて。」ルースの声がする。さあ、今晩の私の仕事は水汲み真っ暗な
大自然の闇の中、ヘッドランプを頼りに、川へ水を汲みに行く。
夕食を済ますと、地べたにロールマットをひいて、シュラフをセットする。私は昨夜の
「いびき事件」に懲りたから、Toki と2人、皆から離れたところに寝場所を取った。
なにせ、広い岩屋の洞窟だから、スペースは充分ある。シュラフの横に、ローソクを
1本立てる。なかなか風情がある。濡れて冷えた体も、カトマンズ Shopで買った自慢
のシュラフが暖めてくれるだろう。
地面の上に、じかに寝るのは、初めてだ。シュラフの下にロールマットを敷いてはいる
がゴツゴツして寝にくい。それでも川渡りの疲れも手伝って、いつの間にかぐっすり眠り込んだようだ。
夜半に目がさめる。張り出した岩の端から星々が見えた! 日本で見るのとは違う
逆さまのオリオン座だ。「明日は晴れるぞ。」 夜間、気温が下がると、露がおりる。
岩屋の天井からポトン、ポトンと水滴の落ちる音が、聞こえる。顔が濡れないように、
頭からスッポリと持参のツエルトを被ることにした。こうして、川渡りに明け暮れた1番
困難な日が終わった。 サバイバルできたことを感謝。
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張り出し岩の下(ダンスホールみたいな広いスペース の空き地)で、夕食(雑食)を、各自、好きな場所に 座って食べる。 |
| ここはパパロア国立公園なのだ。 2度と訪れることはないだろう。 看板の横で記念写真を1枚。 |
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だんだん野宿に慣れてくる。 地面の硬さにも。 |